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第1部 本

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クローディアの秘密

『クローディアの秘密』2000/6/16
E.L.カニグズバーグ (著), E.L. Konigsburg (原著), 松永 ふみ子 (翻訳)


(感想)
 家出をした姉弟の「美的で都会的な」冒険物語です。なぜなら……家出先は、あのニューヨークのメトロポリタン美術館なのですから☆
 作品のタイトルは『クローディアの秘密』ですが、本の前半までは、タイトルには弟『ジェイミー』の名前を使った方がいいんじゃないかな、と思いながら読んでいました。なぜなら成績がオール5で家出計画者の姉のクローディアは、家出中だというのに、歩くのを嫌がってタクシーに乗りたがったり、レストランで食事したがったりと、都会っ子感覚まるだしで、実際に電車代や食費を出すのは、倹約家でリアリストの弟ジェイミーの方なんですから。
 でも後半からは、『クローディアの秘密』はとてもナイスな名前だと思うようになりました。なぜなら、この作品のテーマは、「秘密」にあるからです。残念ながらジェイミーは、子供過ぎるせいなのか、それともリアリスト過ぎるせいなのか、「秘密」に、クローディアほど思い入れはなさそうに思えます(しかも彼は正直者だし、ちょっぴりうっかり屋でもあります)。
 実は、この物語の原題は、『フランクワイラー夫人のごちゃまぜファイル』だったそうで、内容からいうと原題の方が適切なようにも思えますが、そのタイトルだと売れなかったかもしれません。日本の少年少女が、手を伸ばしたくなるようなタイトルではなさそうです(汗)。
(ここからネタバレがありますので、知りたくない方は読み飛ばしてください)
 さて、家出先をメトロポリタン美術館に決めたのは、クローディアでした。なぜなら彼女は、だらしなくて不便な「むかし式」の家出なんか絶対に嫌だったからです。クローディアは思慮深く計画を立て、仲間には、三人の弟のうち、口がかたくて信用でき、お金持ちのジェイミーを選びました(笑)。
 こうして二人は、カバンとバイオリン・ケースとトランペット・ケースに下着をつめて、不公平と退屈から逃れるため家出したのです(ジェイミーの方は誘われたからですが)。
 そして、メトロポリタン美術館は、やっぱり、お勧めの家出先のようです(小声)。勉強もできますし(汗)、黴臭いのを我慢すれば天蓋付きベッドに眠れて、しかも、なんと(さらに小声)食費まで拾えます。
 そしてクローディアは、最近、美術館が買い入れた天使の像が、本当はミケランジェロ作なのではないかという謎に、強くひきつけられます。二人は、この謎を解こうと決意して、図書館で調べたり、夜の美術館でスリリングな奮闘を行ったりして、しまいには、もとの持ち主、フランクワイラー夫人を訪ねていくことになります。
 フランクワイラー夫人は、クローディアの本当の望みを見抜きました。実は彼女の中にも同じものがあったからです。フランクワイラー夫人とクローディアたちが「取引」をするシーンで、彼女は看破します。
   *
「(略)クローディアは冒険がほしいのではないわね。お風呂や快適なことがすきでは、冒険むきではありませんよ。クローディアに必要な冒険は、秘密よ。……」
   *
 その後で、彼女は好奇心に溢れるクローディアに、勉強だけではいけないといいます。
   *
「(略)でも、日によってはもう内側にはいっているものをたっぷりふくらませて、何にでも触れさせるという日もなくちゃいけないわ。そしてからだの中で感じるのよ。……」
   *
 このくだりには、とても含蓄を感じました。このようにからだのなかで熟成されたものだけが、さまざまな傑作を生み出すもとになるのでしょう……。
 最後に、フランクワイラー夫人がどうして天使像を売ったのか、についてのクローディアの考察もとても見事で、やはり二人には同じ感性があるのだなと感じさせられました。私自身は、クローディアよりも、単純なジェイミーの方に同じ感性を感じますが……。遠慮がいらないなら、ロールスロイスの後部座席にある全部のスイッチを試したいです(笑)。
 ところで、クローディアの考察の内容などは、申し訳ありありませんが、ネタバレ過ぎるので「秘密」です(笑)。
   *    *    *
 カニグズバーグさんは、他にも『ベーグル・チームの作戦』、『魔女ジェニファとわたし』などの本を出しています。

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