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第1部 本

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ゲド戦記

『ゲド戦記』2009/1/16
アーシュラ・K. ル=グウィン (著), ルース・ロビンス (イラスト), Ursula K. Le Guin (原著), 清水 真砂子 (翻訳)


(感想)
 アースシーを舞台とした魔法使いゲドの成長を描いた壮大なファンタジーです☆ 古典的名作としても名高いですが、ジブリのアニメ映画『ゲド戦記』の原作として知っている方も多いのではないでしょうか。
『ゲド戦記』という名前から、激しい戦闘中心の冒険記を想像するかもしれませんが、実は戦闘描写はあまりなく、どちらかというと、後に大魔法使いになる少年の「内なる戦い」、つまり精神的葛藤を通じての心理的成長が主要なテーマになっています。
 さて、『影との戦い―ゲド戦記〈1〉』の物語は、アースシーのゴント島から始まります。この島の山羊飼いの少年ゲドには、不思議な力がありました。魔法使いの伯母に魔法を手ほどきされたゲドは、魔術を使って、侵略してきたカルガド軍から村を守ります。その噂が広がり、ゲドは有力な魔法使いオジオンに見出され、やがてローク島の魔法学院で魔術を習うことになるのです。
(※ここから先は、物語の核心にふれるネタバレを含みますので、結末を知りたくない方は読み飛ばしてください)
 魔法使いオジオンは、ゲドに「生きるということは、じっと辛抱することだ」と教えてくれますが、ゲドはオジオンが、あまり魔法を教えてくれないことに不満を抱きます。そして生まれつき強い魔力を持っていたゲドは、内心の傲慢さと若者らしい虚栄心から、魔法使いオジオンの書棚にあった強力な魔法書をこっそり開いて、「影」を呼び出してしまいます。それはまだ彼には不相応なほど高度な魔法でした。オジオンの力で、ゲドは危機一髪で救われましたが、この「影」は、それから執拗にゲドを追い続けることになります。
 この事件にオジオンは怒り、「そなた、考えてみたことはいっぺんもなかったかの? 光に影がつきもののように、力には危険がつきものだということを。(中略)わしらが言うこと為すこと、それは必ずや、正か邪か、いずれかの結果を生まずにはおかん。ものを言うたり、したりする前には、それがどういうことになるかを、あらかじめ、知らねばなるまいぞ!」と諭しますが、ゲドは、オジオンが何ひとつ教えてくれないから、そういうことを知ることも出来なかったのだと反発します。
 そしてオジオンの勧めによって、ゲドは自分の力を制御する方法や真の魔法を学ぶために、ロークの魔法学院に入ることにします。
 そこでめきめき力をつけていくゲドでしたが、自らの傲慢さのせいで、さらに「影」の力を高めてしまう事件をふたたび起こしてしまいます。
 自分の呼び出した「影」が、いつかはアースシーを滅ぼすことになるかもしれない……ゲドは恐怖に怯えながらも、「影」がもたらす災厄から世界を守りたいと決意します。そして……。
 というのがこの物語の前半です。ネタばれはしたくないので、後半のあらすじは書きませんが、実はこの物語の1ページ目で作者自身がネタばれしていて、ゲドはのちに「竜王」と「大賢人」の二つの名誉をかちえる存在になります(笑)。天才ゲドの苦難に満ちた青春を描いたのが、この『影との戦い』で、この作品の中で、「影」との一応の決着がつきます。
 精神的な闘いが主要テーマなので、読み進めるうちに、さまざまなことを考えさせられます。ゲドは「強すぎる自尊心」のせいで、困った事態をまねいてしまいますが……、程度の違いはありますが、青春時代って、そういうことをやりがちですよね?(汗)。
「影」とゲドがどう対決していくか……、最初の作者のネタばれのおかげで、ゲドが最終的には何かをやり遂げることが分かっていても、絶望的な状況を読むと、胸が苦しくなってしまいます。
 少年から青年時代(小学校高学年以上)に、一度は読んで欲しい名作です。
   *   *   *
 ゲド戦記は、初期の3部作として、この『影との戦い』の他、『こわれた腕環』、『さいはての島へ』があります。
 また、この3冊の20年ぐらい後以降に、『帰還 -ゲド戦記最後の書-』が出て、さらにその10年ぐらい後に、『アースシーの風』、『ゲド戦記外伝』が出ています。
 そして、ジブリのアニメ映画『ゲド戦記』は、第3巻の『さいはての島へ』を中心に、他の要素を加えた独自脚本を使っています。以下の商品リンクでは、Blu-rayとDVDの朗報を紹介しています。

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