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第1部 本

描画技術

荒木飛呂彦の漫画術

『荒木飛呂彦の漫画術 (集英社新書)』2015/4/17
荒木 飛呂彦 (著)


(感想)
 人気漫画『ジョジョの奇妙な冒険』の個性的な世界を作り上げた荒木飛呂彦さんが、漫画の描き方を教えてくれる本です☆
「漫画は最強の『総合芸術』」と言い切る荒木さんが、これまで明かすことの無かった漫画の描き方やストーリー作りの秘密を、自分の作品を題材にしながら、惜しみなく披瀝してくれます。
 さて、漫画を描く時、常に頭にいれておくべきことは、漫画の基本四代構造(「キャラクター」「ストーリー」「世界観」「テーマ」)だそうです。そしてこの四つは、互いに深く影響を及ぼし合って、ひとつの世界の営みを作っています。この本では、これらの各項目について、事例を使って詳しく解説してくれます。
 その中の「ストーリーの作り方」には、「主人公は常にプラス」でなければならない。という原則がありますが、これは荒木さんの活躍する「週刊少年ジャンプ」での連載漫画の宿命のような気がします(汗)。「週刊少年ジャンプ」は常に読者アンケートをとっているので、「主人公が負け続ける=読者の気分が下がる」という構図があるからです。確かにそうだとは思いますが……「主人公は常にプラス」という縛りがあるのに、ストーリーに起伏をつけなければなならないのは、すごく難しいことのような……。読者アンケートの功罪を感じてしまいます(汗)。
 また、読みたい気持ちにさせて、最後まで読ませるには、導入部が大事だとも言っています。漫画の冒頭が面白くないと、編集者も読者も、すぐに読むのをやめてしまうからだそうです(汗)。
 そのため、最初の一ページには、「5W1Hの基本(いつ、どこで何をしているかが分かる)」、「他人と違う自分ならではの個性」、「同時に複数のねらいを描く」、「漫画全体の予告」を盛り込まなければならないそうで……うーん、確かにここまで盛り込まれていれば、続きを読まずにはいられなくなりますよね……これも、すごく大変そうですが(汗)。
 荒木さんは、プロになる前や新人時代に、ボツにされた原稿がたくさんあったそうで(今ではとても信じられませんが……)、「何がいけないのか」を徹底的に考えて、次の漫画を描いていたようです。……さすがです……。
 そして、なんと、すでに超人気作家になった現在でも、色んな工夫を続けているそうです。「一世を風靡したキャラクターであるほど、時が経てば時代遅れになってしまうでしょう。なぜならキャラクターは時代性を反映するものだからです」と言っています。時代が変わっても読まれる漫画にするには、ストーリーに新しいエピソードを加えて現代風にアップデートし続けることが必要だそうですし、時代に合わせて、荒木さんもキャラクターのデザインを変えてきたそうです。
 その他にも、「キャラクターをつくるときには、絵にする前に必ず身上調査書を作る」とか、役に立つヒントが満載です☆
 その上、最後には、「実践編その1 漫画が出来るまで」で、編集者との打ち合わせで使うアイディアノートや、シナリオの現物まで見せてくれますし、「実践編その2 短編の描き方」では、『岸部露伴は動かない』に収録された漫画「富豪村」の一部を使って、解説してくれます。
 すごく参考になる内容ですので、『ジョジョ』ファンの方や、漫画を描きたいと思っている方はもちろん、ふつうの漫画好きの方も、ぜひ読んでみてください☆
 ところで、残念ながら、これが「自ら手の内を明かす、最初で最後の本」だそうです。
 それならば、次は、「いつまでも若くいられる」秘訣を明かしてくれる本を期待したいです(笑)。
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 荒木さんは、他にも、集英社新書の『荒木飛呂彦の超偏愛! 映画の掟』、『荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論』や、『ジョジョの奇妙な冒険 全63巻完結セット』など多数の漫画も出しています。
 また『『ジョジョの奇妙な冒険』で英語を学ぶッ!』という楽しく英語を勉強できる本もあります。
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 別の作家の本ですが、『定本 映画術 ヒッチコック・トリュフォー』や、『われらの時代・男だけの世界 (新潮文庫―ヘミングウェイ全短編(1)』は、この本の中で、荒木さんが参考にしていると言及している本です。
 また『映画術 その演出はなぜ心をつかむのか』、『マンガ脳の鍛えかた 週刊少年ジャンプ40周年記念出版 (愛蔵版コミックス)』も参考になると思います。

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