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第1部 本

文学(絵本・児童文学・小説)

絵本・児童書(日本)

夏の庭―The Friends

『夏の庭―The Friends (新潮文庫)』1994/3/1
湯本 香樹実 (著)


(感想)
 老人と三人の少年のひと夏の物語です。
 と、言っても「夏休みに僕らは一人の老人と知り合った。川に近い森の一軒家で、竹とんぼ、魚釣り、いろんな遊びを僕らは教わった……」みたいな感じの、単純で爽やかな話ではありません。なぜなら少年たちは、誰かが死ぬところを見たくて、老人の観察を始めたのですから……。
 山下、川辺、僕(木山)の仲良し少年三人は、山下がお祖母さんの葬儀に出たことで、「死ぬこと」にすごく興味を持ちます。そして、「もうじき死にそう」と言われている近所の老人の観察を始めるのです。少年たちは、「誰かが死ぬこと」に現実感が持てず、「死んだらどうなるんだろう」ということが気になってしかたがなかったからです。
 やがて夏休みが来て、老人観察を続けている少年たちの好奇心は、日ごとに高っていくのですが、なぜか「すぐに死にそう」なはずだった老人は、むしろだんだん元気になっていくようにも見えて……。
 (※ここから先は、物語の核心にふれるネタバレを含みますので、結末を知りたくない方は読み飛ばしてください)
 そして少年たちの「観察」は、老人にばれてしまい、少年たちは老人に洗濯や家の修繕の仕方を教えられ、ごみだしや草取りを手伝い花の種を蒔いたりして、こき使われて(?)いるうちに、老人の陰惨な戦争体験まで聞いてしまうほど、彼らの交流はどんどん深まっていきます。
 三人の少年は、誰もお祖父さんお祖母さんと一緒に暮らしていないので、それまで老人と生活したことがありませんでした。観察対象の老人と交流を続けているうちに、老人になること、お化けのこと、生きること、そして死ぬことについて、彼らはそれぞれ、さまざまなことを考えるようになっていきます。
 そして夏休みも終わりに近づき、サッカー合宿から三人が戻ってくると……。
 ……たぶん、老人は、この三少年と出会えて、幸せだったのだと思います。
 最後に山下が言う言葉が、胸にじーんと沁みました。そして、この『夏の庭―The Friends』のFriendsは、少年たちだけを指しているのだと思っていたのですが、本当は、老人も含まれていたのだと、その時に気づかされました。
 「死」を正面から扱った児童小説ですが、読んだ後に、温かいものが心に残ります。小学校高学年から中学生ぐらいの時に、ぜひ一度は読んでみて欲しい名作です。
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 『夏の庭-The Friends-』は、映画化されていて、DVDも出ています。
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 湯本さんは、他にも『春のオルガン (Books For Children)』、『ポプラの秋 (新潮文庫)』、『くまとやまねこ』、『魔女と森の友だち』、『西日の町 (文春文庫)』などの本を出しています。
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 別の作家の本ですが、『キツネ山の夏休み』は、不思議な夏休みの思い出を描いた本。そして『ガラスのうさぎ』は、一九四五年の東京大空襲を体験した少女の感動のノンフィクションで、心に残る本です。

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