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第1部 本

社会

東大医学部生が受けているダイバーシティ&インクルージョンの授業(笠井清登)

『東大医学部生が受けているダイバーシティ&インクルージョンの授業 「建前」から「納得」へ 11人の講義動画付き』2026/7/13
笠井清登 (編集), 熊谷晋一郎 (編集)


(感想)
 東京大学医学部「医学のダイバーシティ教育研究センター」で実際に講義をする12名の経験専門家たち(研究者、教育者、当事者たち)が、ダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(包摂性)について語ってくれる本で、主な内容は次の通りです。
講義1 依存、依存症から見るDEI 《熊谷晋一郎》
補講「優生思想」と「生産性重視」に我々はどう対抗できるか《熊谷晋一郎》
講義2 共同創造が必要な理由~スティグマを事例として 《山口創生》
講義3 共同創造の実践的説明 《宮本有紀》
講義4 共同創造とピアサポート 《佐々木理恵》
講義5 学校精神保健の観点から 学校でのDEIを考える《大島紀人》
講義6 トラウマインフォームドケア《西 大輔》
講義7 自閉症者の立場からジェンダーを考える 《綾屋紗月》
講義8 ダルク女性ハウスと回復のナラティブ《熊谷晋一郎/りえこ》
講義9 長崎ダルクと回復のナラティブ《かわ》
講義10 女性にとっての自助グループとは 《上岡陽江》
講義11 ディスカッション「誰が社会的に排除されているか」「専門家との付き合い方について」 《熊谷晋一郎/りえこ/上岡陽江/かわ》
講義12 Nothing about Us Without Us~共同創造、当事者研究、ユーザーリサーチャー 《熊谷晋一郎》
講義13 科学の多様性について~障害のある研究者の参加 《並木重宏》
グループワーク:DEI を体験的に学ぶために「発言しづらさ」を、場の側からとらえ直す 《里村嘉弘/金原明子》
おわりに:東大医学部でなぜD&Iを必修授業に?《笠井清登》
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 2021年4月、東京大学医学部は「医学のダイバーシティ教育研究センター」を設立しました。授ける医療から、当事者と共に共同創造していく医療へと、東大医学部は明確に舵を切ったそうです。
 過度な能力主義や優生思想が広まり、排他的で緊張が高まっている現在、医療者や支援者が、自身と患者の命を守るために立つべき位置はどこにあるのかについて語ってくれます。
 冒頭の「講義1 依存、依存症から見るDEI 《熊谷晋一郎》」では、本書のタイトルにある「ダイバーシティ&インクルージョン」について、次のように書いてありました。
「ダイバーシティは、単にパーティーに招かれること。インクルージョンはダンスに誘われること。」
 ……ダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(公平性、所属感)は、こんなに違うんですね……。
 生まれつき脳性麻痺という障害をもちながら、大学で医学を勉強した熊谷さんは、次のようにも語っています。
「社会モデルの考え方は、私を含めた多くの障害者を本当に救ってくれたなと思います。というのも、医学モデルで考えると、自分の心や身体を自己責任で変えて環境になじむようにしないといけないのですが、社会モデルで考えると、必ずしも自分の心や身体を改造しなくても社会環境の側が変わればいい。たとえばバリアフリーの工事をするとか、エレベーターを設置するとか、社会の制度をかえるといったように、社会環境の側を変えればミスマッチは解消する、そういうアイデアだったからです。」
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 この講座では、他にもハッとさせられる指摘がたくさんありました。
 例えば、2016年に起きた相模原障害者施設殺傷事件や、重度の障害者の子どもを殺す母親たちの事件の真犯人は、「優生思想的な価値観」ではないかとして、障害者運動のリーダーの一人だった横塚晃一さんの『母よ! 殺すな』という本をあげて……
「(前略)世の中にはびこる能力主義や優生思想、つまり能力の高い人に価値が宿るという根強い思想が、母親や家族にインストールされて、このような痛ましい事件を引き起こしたのだ。真犯人は社会に流布している、そういった優生思想的な価値観のほうだ、ということをするどく指摘をしているわけです。」
 ……と語っています。
 また、財やサービスを利用する人こそが、財やサービスをデザインするのに最適な人材であるとして……
「(前略)生産性というのは、誰かの必要性とリンクし、必要性を満たしたときにだけ二次的に価値が宿るものなんですね。
 つまり「必要性が価値の源泉」だということです。」
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 また本書では、自助グループなどの「ピアサポート」の重要性も語っています。
「講義4 共同創造とピアサポート 《佐々木理恵》」では……
「(前略)ピアサポートは、同じような経験をした仲間同士が対等な仲間として出会い、支え合う営みです。重要なのは、どちらか一方が支えるのではなく、対等で相互的な関係であるという点です。体験、気持ち、情報、考え方などを分かち合うことは、「私だけじゃない」「仲間がいた」という安心感や心強さにつながり、夢や希望を取り戻す力になっていきます。」
 ……そして講義8から10では、ダルク女性ハウスなどの自助グループでの実際の経験などが語られていました。例えば「講義8 ダルク女性ハウスと回復のナラティブ《熊谷晋一郎/りえこ》」では、ダルク女性ハウスでスタッフとして働く人に、自身の依存症体験、回復のために何が助けになったのか、そして自身に起きた変化について語ってもらっています。これらは、自助グループの持つ力を、まざまざと実感させてくれました。
 また「講義12 Nothing about Us Without Us~共同創造、当事者研究、ユーザーリサーチャー 《熊谷晋一郎》」では、医療をする側と受ける側が、力を合わせて共同創造することの重要性について……
「(前略)過去の歴史から言えるのは、専門家だけで研究や実践を進めてしまうと、当事者のニーズにかなった研究や医療が実現しにくいということです。
「医療サービスを受ける患者さん側こそが、サービスをデザインするのに最適な人材である」という考えにもとづき、共同創造していこうという流れが強まっています。」
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『東大医学部生が受けているダイバーシティ&インクルージョンの授業 「建前」から「納得」へ 11人の講義動画付き』……東大医学部で必修授業になっているダイバーシティ&インクルージョンの授業を学ぶことができて、とても参考になりました。障害をもつ人が生きやすい社会にしていくことは、高齢化を迎える現在、私たち誰にとっても望ましい社会にしていくことにつながるのだと思います。みなさんも、ぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。

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『東大医学部生が受けているダイバーシティ&インクルージョンの授業』