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第1部 本
天文・宇宙・時空
宇宙線のひみつ(藤井俊博)
『宇宙線のひみつ 「宇宙最強のエネルギー」の謎を追って (ブルーバックス B 2301)』2025/7/17
藤井 俊博 (著)

(感想)
1912年の気球実験で存在が明らかになって以来、はるか宇宙の彼方から届く「謎の手紙」として、宇宙物理学者たちの好奇心を刺激し続けてきた「宇宙線」。その研究からは、「反物質」や「素粒子」の発見、46億年におよぶ太陽活動の歴史、巨大な物質を透視する「ミュオグラフィ」など、さまざま科学的叡智が生み出されてきました。
本書は、世界的な話題を呼んだ「最強クラスの宇宙線・アマテラス粒子」を発見した宇宙物理学者の藤井さんが、宇宙線研究100年の軌跡とその最前線を紹介してくれる本で、主な内容は次の通りです。
序章 アマテラス粒子の衝撃
第1章 宇宙から送られた「謎の手紙」
第2章 こんなにすごい宇宙線
第3章 「最強の宇宙線」を追え
第4章 極高エネルギー宇宙線の正体
第5章 天文学のパラダイムシフト
終章 2040年代の宇宙線天文学
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「終章」に本書の短い概要紹介のようなものがあったので、まずそれを紹介します。
「(前略)宇宙空間に存在する高エネルギーの放射線である「宇宙線」を人類がはじめて発見してから、100年以上が経過しました。その歴史は、V・F・ヘスが高所での放射線の増加を確かめた、1912年の気球実験にさかのぼります。そこから一世紀にわたって「どれくらい高いエネルギーの宇宙線があるのか、どのように宇宙線が生まれ、どうやって地球にたどり着いたのか」という問を解決するために、観測が続けられてきました。
1962年には、J・リンズレーらが設置したボルケーノランチアレイで100エクサ電子ボルトの宇宙線が検出されました。1991年には、フライズアイ実験で、320エクサ電子ボルトのオーマイゴッド粒子が見つかっています。そして現在、テレスコープアレイ実験とピエール・オージェ観測所という南北半球の観測によって、100エクサ電子ボルト以上の宇宙線の統計量は飛躍的に増加しています。
宇宙線は、エネルギーが10倍になると約1000分の1に減少するエネルギースペクトルをもっています。したがって、より高いエネルギーをもつ「超激レア」な宇宙線を観測するには、広大な検出面積と10年以上の長期にわたる定常観測が必要です。現に、テレスコープアレイ実験による16年を超える定常観測のなかでも、200エクサ電子ボルトを超える宇宙線は、今のところアマテラス粒子のたったひとつだけです。
アマテラス粒子は、極高エネルギー宇宙線の起源と目される候補天体がほとんどない「局所的空間」と呼ばれる方向から到来しており、粒子種は明らかになっていません。宇宙線の起源についての謎と興味は、いまだ深まるばかりです。」
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宇宙線というのは、宇宙空間に存在する高エネルギーの粒子で、放射線の一種。広義には、陽子、中性子、原子核、電子、陽電子、ニュートリノ、光子、重力波なども宇宙線に含まれるそうです。
そして高エネルギー宇宙線の検出方法には、次の2種類があります。
1)夜間に望遠鏡を使って空気シャワーから発する光を撮像する方法(大気蛍光望遠鏡、チェレンコフ望遠鏡)
2)地表に並べられた粒子検出器によって空気シャワーを検出する方法
……アマテラス粒子は、このうち2番目の方法で、アメリカ・ユタ州で稼働している宇宙線検出装置「テレスコープアレイ実験」で検出されました。この空気シャワーというのは……
「空気シャワーとは、高エネルギーの宇宙線が地球大気に入射した際、地球にある空気と相互作用して生成される粒子群のことです。(中略)
空気シャワーのすごいところは、どれくらいの範囲に空気シャワーが広がっているかという情報から、1次宇宙線のエネルギーを推定することができる点でしょう。1次宇宙線のエネルギーが高いほど、生成される空気シャワーを構成する粒子数が増え、地上では広がって到来するからです。」
……だそうです。
「第2章 こんなにすごい宇宙線」では、宇宙線が細胞のDNAを傷つけて遺伝子に突然変異を生じさせることで「生物進化に影響を及ぼす」こと。木の年輪ごとの炭素14の存在量を調べることで数千年前までの宇宙線量を調べることができて、太陽活動が分かること。宇宙線には雲の生成を促す作用があること。宇宙線は地球が出来るためにも重要な役割を果たしてきたこと(宇宙線のもつ物質透過力と電離作用は、惑星が成長するうえで重要なエネルギー源)など、宇宙線の果たしてきた凄い役割について説明されていました。
またミュオグラフィによる「透視」にも使われていて……
「地球に到来する宇宙線と大気との相互作用によって生成されるミューオンは、電荷をもつためにあらゆる物質と相互作用しながら進みます。この利点を活かして、巨大な物質を透視することが、「ミュオグラフィ」の技術的な本質になります。(中略)もし、ある方向に非常に密度の高い物質が存在すれば、その方向から到来するミューオンが「減少」します。逆に、ある方向に空洞が存在すれば、その方向からのミューオンは「減らない」というわけです。」
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さらにミューオンを使うと、「壊さずに中身を解析する」ことが出来るようで……
「ミューオンのエネルギーを調節できれば、どれくらい物質に入射させて止めるかを自由にコントロールできます。そしてミューオンが入射したときに、物質を構成する原子と反応して発生するX線を検出すれば、その中身にどのような物質がはいっているのかを調べることができます。」
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またニュートリノ観測装置の「カミオカンデ」の仕組みも紹介されていました。
「カミオカンデは「外水槽」と「内水槽」から構成されており、「外水槽では無信号→内水槽でのみチェレンコフ光を発する信号」をニュートリノの候補として選別します。外水槽では電荷をもたない中性粒子であるニュートリノが、内水槽では相互作用して荷電粒子(電子やミューオン)を生成し、水中でチェレンコフ光を放射するという原理を利用しているのです。」
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宇宙線は「宇宙のしくみを解きあかすカギ」になるそうです。
「(前略)光を使っても太陽の表面しか観測できず、内部で何が起きているかはわかりません。しかし、宇宙線を使えば、太陽内部で核融合が起きていることがわかります。より具体的に言えば、太陽の中心で4つの陽子が核融合してヘリウムになり、ニュートリノが放射されていることも明らかになっているのです。」
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でも極高エネルギー宇宙線がどこから来ているのかについては、まだ分かっていないようで、超新星爆発後に広がった衝撃波(超新星残骸)や、中性子星、超巨大ブラックホールの中心から噴出される「ブラックホールジェット」、宇宙最大の爆発現象「ガンマ線バースト」、銀河団による加速などが、極高エネルギー宇宙線の発生源候補にあげられているようでした。暗黒物質(ダークマター)のなかで特に重たい質量をもつものが対消滅し、100エクサ電子ボルトの宇宙線を生成している可能性もあるようです。
『宇宙線のひみつ 「宇宙最強のエネルギー」の謎を追って』……ブラックホールの内部や星の爆発を探ることができるかもしれない「宇宙線」の研究の歴史や観測方法などを紹介してくれる本で、とても興味津々な内容でした。宇宙に興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
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『宇宙線のひみつ』